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KiP・入居者インタビュー Vol.018 emol株式会社 武川 大輝さん

メンタルヘルスケアの課題にどんどん切り込んでいきたい

今回のKiP入居者インタビューはemol株式会社(エモル)の武川大輝さんです。武川さんは感情を記録して AIロボと気軽に話しながら自身の感情と向き合うことのできるメンタルヘルスケアアプリ「emol」を開発・運営しています。武川さんにemolやKiPの活用についてお聞きしました。

武川 大輝(たけがわ・だいき)。2018年3月にメンタルヘルスケアアプリ「emol」を開発し、2019年3月にemol株式会社を設立。2020年11月に本社を東京から京都へ移転し、その後、大阪、神戸に拠点を置き、強迫症・不安症向け治療用アプリの臨床研究を進めている。

ーーーKiPに入居されたきっかけは何ですか?

2020年にコロナ禍に突入してリモートワークに切り替えたところ、オフィスが東京にある意味があんまりないことに気づき、社内で環境を変えてみるのも面白いかもという話になりました。関西での最初のオフィスとして京都を選んだのは、emolがメンタルヘルスを扱う会社なので禅にゆかりのある場所というのが理由のひとつです。

京都ではヘルスケアスタートアップが集まる「HVC KYOTO 2021」という事業をKRP(京都リサーチパーク)が実施していて、ピッチイベントに登壇して、何かと助けていただきました。元々emolはコンシューマ向けのメンタルヘルスケアのアプリでしたが、そこから今の臨床研究の方向に展開できたのは関西に来たのが大きかったです。

メンタルヘルスケアアプリ「emol」。AIロボットのロクちゃんがいろいろ質問をしてくれる。

その後、神戸市役所の職員の方と知り合う機会ができて、神戸市がスタートアップ支援に力を入れているという話を聞きました。さらに神戸医療都市産業推進機構におつなぎいただいて、そこでカルチャーショックを受けました(詳細記事/AIの力でメンタルヘルスケアをサポート 神戸医療産業都市との連携で目指す治療の新領域!)。弊社はこれまではあまりライフサイエンスに明るくないスタートアップとしてやってきた中で、ヘルスケアのクラスター(集まり)としていろんなプロジェクトが兵庫県で動いていることに驚きました。

東京でも似た動きはありますが、さまざまなジャンルの全体を見ていて、当時はヘルスケアなど何かの分野に特化してはいませんでした。そんな中で神戸では医療に特化しているので、支援体制が手厚く整っていると感じました。

それで神戸医療都市産業推進機構から西宮市に拠点のある兵庫医科大学を紹介いただいて、大学にはヘルスケアグループと医療機器グループ、創薬グループ、スタートアップグループと4つグループがあるのですが、どのグループとも関わらせていただいています。

いま弊社は強迫症の分野に取り組んでいますが、ちょうど強迫症の研究をされている松永寿人教授とも知り合うことができて、いま研究開発をご一緒させていただいています。

東京から移ってきて京都でもいろいろ手助けしていただいているんですが、兵庫でもいろいろご支援いただいて弊社が成り立っています。さらに協働がしやすくするために兵庫県の拠点としてKiPに2021年12月から入居しています。

ーーーKiPはどのように活用されていますか?

スモールオフィスに入居していますが、この前、NHKの取材を受けた際はオープンスペースや会議室のシリーズAやBを使わせていただきました。他のスタートアップにKiPのオススメしたいポイントは、スムーズに施設が利用できるところです。これまで利用してきた施設の中には、電話やメールで申込書を送って予約するような、スタートアップ向けというより一般企業向けのような施設もありました。また、高額な利用料の施設もある中で、KiPは格安だと感じました。

ほかのKiPの活用方法としては、つい最近、グローバルなSDGs課題解決を目指す共創プログラムの「SDGs Challenge」のヨーロッパ視察にも同行させてもらい、弊社はドイツのベルリンに行くことができました。世界的にドイツが治療用アプリの先進国なんですが、現地でいろいろ刺激を受けました。

東京でもコワーキングスペースをよく活用していた経験から感じるのは、KiPはハブ拠点として充実していて、自治体や銀行などと横連携がとれていて、円滑につながりが生まれていると感じています。弊社のようなスタートアップがひとつひとつとつながりをつくろうとしたら、こんなダイナミックな横展開はできなかったと思うので、兵庫に来て良かったと思います。

ーーー今後どういうことに取り組んでいきたいですか?

メンタルヘルスの課題は根深いです。病院に行く前の予防であったり、病院に通ってからのケアなど、ひとつひとつ解いてこそメンタルヘルスの課題に対応できると思っています。

いま自治体さんと経産婦のケアに取り組んでいますが、教育期間を通じて小中学校のケアや企業の従業員のケアなど、emolのアプリを使って、さまざまな分野にタッチポイントをつくっていこうと考えています。

元々は代表でパートナーである千頭の悩みからはじまった弊社ですが、どんどん課題の領域が広がっています。中には国の制度を変えないと動かせないような根本的な問題もあり、それらをひとつひとつ解いていくためにいろいろ取り組んでいきます。

取材・文/狩野哲也 撮影/横山宗助