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KiP・入居者インタビュー Vol.008 イトイット 淺田 ソマさん

起業準備中に「ワーキングデスクに空きが出た」と知った瞬間、呼ばれていると感じました(笑)

今回のKiP入居者インタビューはイトイットの淺田 ソマさんです。イトイットは手刺繍の企画をデザインする事業であり、ベトナム手刺繍ブランド fito(フィト)を企画販売しています。 KiPに入居される経緯からお聞きしました。

淺田 ソマ(あさだ・そま)。伊丹市出身、神戸市在住。九州芸術工科大学  芸術工学部  工業設計学科卒。プロダクトデザイナーとしてデザイン事務所勤務の後、1997年より 京都西陣“ 爪搔き本つづれ織” の 職人に。第二子出産を機に2009年から輸入雑貨メーカーでメインデザイナーとしてベトナム刺繍に関わる。2018年にオリジナル手刺繍ブランド「fito(フィト)」を立ち上げ、2019年「イトイット」として事業開始。2019年度兵庫県の「女性起業家助成金事業」に採択される。

ーーーKiPに入居されたのは何がきっかけでしょうか?

KiPのウェブサイトを見たことがきっかけですね。まだ起業準備中で「何をどうすればいいのかな」という時期で、情報集めをしているときにたまたま見かけました。ちょうど「ワーキングデスクが1日前に空きました」とウェブサイトに記載されていて「私はここに呼ばれている」と思いましたね(笑)

KiPのワーキングデスク入会には事業計画書を提出しなければいけなくて、それがなかなか書けなくてずっと悩んでいました。実は今でも事業の長期計画には悩んでいます。

今は「商品の企画をして、それをベトナムでつくって販売する」というのが私の仕事の基本の流れなのですが、物を売って、売った利益で事業を回すというやり方から離れたい気持ちはあります。「これだけ世の中にものが溢れていて、自分がものづくりをする意味はなんなんだろう?」という思いが学生時代から意識の根底にあって。

でもものづくりに関わっていることは好きなんですよね。ものづくりの喜びや、それを使ったり目にしたりする喜びはとてもダイレクトなものなので、それ自体は受け止めたい。実際に目の前でお客様が本当にうれしそうにしてくださっていることがなによりの喜びで、そのおかげで続けられています。その喜びを受け止めながら、納得できる仕組みで次のステップに進みたいと考えています。

ーーーKiPに入居されてからの変化はありますか?

ベトナム刺繍の仕事が軌道に乗ってからは、スモールオフィスに移りました。デザイン作業や制作指示書作成などのパソコン作業をしたり、商品を梱包したり、商品在庫を持たないといけないのでオフィス兼小さな倉庫として使っています。

KiPがあるから事業が続けられていると言っても過言ではないかも。一人で仕事しているのは孤独なのでKiPに来ることそのものが大事なことなんです。役立ったのは無料で専門家相談が受けられることです。決算書や確定申告の作成相談や、どういうふうに利益をつくっていくかといったコンサルティング的な相談などとても助かりました。

またKiPの入居仲間からの人脈で仕事の幅も広がりました。紹介頂いた百貨店の社員さんからの的確なアドバイスは今もずっとパッケージに生きています。

手刺繍のシール「ししゅール」

こちらの商品「ししゅール」は、神戸市とKiPの共催セミナー「クリエイティブスパルタ塾」の新商品を考えるワークショップから誕生したもので、今、主力商品となっています。近藤清人さんというデザイナーの方が講師でとても専門的な話をたくさん聞けました。

「ししゅール」の販促用ポップは以前スモールオフィスでお隣さんだったグラフィックデザイン事務所のAmelcoの橋本さんにデザインしてもらっています。

ーーー今後事業を通じて叶えていきたいことはありますか?

手刺繍というコンテンツを使ってなにか面白いことができないかなとはずっと思っています。子どもたちの教育分野に関わりたいなとぼんやり思っていますが、まだ具体的ではありません。特大の刺繍絵本を作りたいな、とかそんなことを思ったりしつつしています。少しずつですが、OEMの仕事も増えてきているので、そちらも伸ばしていきたいと考えています。ベトナムのパートナー工房の方たちにも仕事の喜びを感じてもらえることを一緒に考えていきたいと思います。

取材・文/狩野哲也 撮影/横山宗助